辺辺
a sight of Kesen30

            あだりほどり
   気仙・辺辺の四季


   輓馬の太郎




木材ヤマ出し作業に輓馬(ばんば)の姿を見かけることは最近ほとんどなくなった。
十年ほど前までは、大船渡市内でも四〜五頭の輓馬が活躍していたと言うが、今ではわずか一頭だけ。
立根町田ノ上の金野克巳さん(80)が飼っている愛馬、太郎だ。ヤマ出し
木挽き十年、ヤマ出し二十七年。
克巳さんと太郎のつきあいは、かれこれ二十年以上になる。
仕事は長男に譲り、克巳さんが山稼ぎをやめて十年が過ぎた。
太郎の年齢は二十五歳。
人間でいうと百二十五歳にもなるという。
四歳の時、釜石からやってきたノルマンとペルー系の雑種。
農耕馬よりははるかに丈夫で、白い鼻筋が印象的だ。
伐採搬出作業が機械化しても、年に何度か太郎の出番がある。
「車の入らないところでも馬ならラクラク。十年前までは一緒に仕事をしていたが、こんな利口な馬はいないね。何でも命令どおりに動く。人の言葉がわかるんだよ」と克巳さん。
「ハイ、ハイ」で前進。止まるときは「ドォ〜」。
右も左も号令ひとつで動くので、手綱を引く必要もない。
「チャグチャグ馬コ」にも二度出たことがある。太郎と克巳さんそして子供達
今年の大船渡町五年祭には出られなかったが、お祭りの曲録(きょくろく)馬にはいつも引っ張りだこだった。
第一線を退いて、今ではほとんど厩舎(うまや)暮らし。
干草とワラを細かく切って、麦ぬかを混ぜて食べさせるのが克巳さんの日課だ。
厩舎近くにある大船渡第一中学校。
春の大運動会ではフィナーレに優勝したチームの主将を乗せ、万雷の拍手の中、グランドを一周するのが太郎の役目。
勝ち馬の凱旋パレードを思わせるこの瞬間が、太郎にとって最高の花道となっている。

            






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イラスト  庄司暁子
デザイン 佐藤千香子

99/6/18



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