辺辺

a sight of Kesen75

           
   

         

         


大船渡市立根町の川原というところに百年以上も続く富山(とみやま)温泉という小さな湯治場がある。
「沢の湯」とか「冷泉」などとも呼ばれている。
コンコンと湧く不思議な井戸が源泉。
鳥居をくぐり赤いトタン葺きの小屋の中に、石垣で囲まれている。
柄杓ですくって飲んでみるとこれがクセがなくて甘露。
ポンプでくみ上げ、沸かし湯にして浴槽に送る。
五〜六人も入れば満員となる。
「井戸の水量が少ないように見えるが、枯れたことがない」というのは自称・五代目代理の富山時雄さん(63)。
明治のはじめ、初代が近くの沢にかかる丸木橋の下で人の顔をした小さな石を見つけた。
胴乱の根付にしようとキリで穴をあけようとしたら、石片がはじけ自分の目に当たった。
「これは何かの知らせかもしれない」とその人面石を神棚に祀った。
夢の中に神様が現れ「家の前の沢を掘ると水が出る。その水を沸かして入ると、どんな病気でもすぐ治る」というお告げがあった。
さっそく井戸を掘ったところ、きれいな水が湧き出た。
枯れることのなかった水が今から五十九年前、近所の人がこの井戸でキュウリを洗ってからというもの、パッタリでなくなった。
時雄さんの母親が六時間も井戸の前に跪き「出してください、出してください」と祈ったところ、乾いた砂が静かに動き出し、再び水が湧き出したという。
現在の湯治場として営業したのは昭和三十七年から。
湯の温度は四二度と熱からず温からず。
効能は「神経痛、皮膚病など万病に効くが、この風呂に入った人でないとわからない。
主人と建物はよくないが、お湯はいいよ」と笑った。












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Dr    大谷俊彦
イラスト  庄司暁子
デザイン 佐藤千香子

2003/2/16


OFUNATO SAITOSEIKA